【「あの日の絵」】明親小5年1組の震災(4)動物大ピンチ(産経新聞)

 ■娘に思う ありがたさ

 尋常ではない揺れに、とっさに横で寝ていた一番下の弟に覆いかぶさった。真っ暗な中、リビングのドアを30センチほどこじ開けると、飼っていた猫が飛び出してきた。犬が親子でテーブルの下にうずくまっているのを確認してやっと、「大丈夫や」と安心した。15年前、山本郁未(いくみ)さん(26)は、愛犬が隠れていたあの日の様子を「動物大ピンチ」と題して描いた。

 震災当日、未明から中央市場に出勤していた父は揺れが収まったころ飛んで帰ってきた。神戸市兵庫区の自宅にいた母と兄弟3人にもけがはなく、パジャマの上に毛布をかぶってひとまず市場へ避難。日が昇ったころに戻ると、長田区の方向に炎が上がっていた。

 自宅で何とか生活していくことはできたが、一番下の弟がまだ1歳だったこともあり、山本さんは学校再開まで、2歳下の弟とともに兵庫県明石市の叔父宅に預けられた。

 面識がほとんどなかった叔父は当時、叔父の母と2人暮らし。預けられた兄弟の遊び相手はもっぱら家庭用ゲーム機だったが、叔父はせっせと新しいソフトを買い、仕事が休みの日はゲームセンターに連れて行ってくれた。「今思うと、本当に精いっぱい遊び相手をしてくれていたんですね」

 友人から、水くみや配給に何度も並ぶなどの苦労話を聞いたが、「いなかったから、大変だった記憶があまりない」。それでも、物が散乱した自宅リビングを前に「早く外へ出ないと」と焦ったことと、明石までの道中、高速道路に緊急車両専用道が設けられていたことは鮮明に覚えている。当時の写真を見るだけで、「怖くて仕方がなかった」という気持ちが生々しくよみがえる。

 3人兄弟の一番上。小学生のころから、おなかをすかせた弟たちに簡単な料理を作ったこともあった。だからなのか、食べた人が喜ぶ顔を見るのが好きだという。アルバイトを機に、本格的な板前の勉強を始め、現在は神戸・三宮のふぐ料理専門店で腕をふるう。2年前には結婚し、娘にも恵まれた。

 アンパンマンに夢中の娘が、とっさにかばおうとした弟と同じ年になった今、ふと思うことがある。小学生だった兄弟を親戚(しんせき)に預け、被災地で生活再建に奔走した両親、そして支えてくれたたくさんの人々の存在は、本当にありがたかったのだ−と。

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